名前を呼ぶ

自分が子供の頃のことを思い出していて、小学校の2年生頃は、お友達に意地悪をされて嫌だなーと思うことが多かったけれど、小学校6年生の頃はそんなことは全くなかったなと気づいた。それで、どこで変わったのか?と記憶を辿ったところ、ある場面が浮かんだ。

 私は小学校4年生の時に転校した。クラスメイトの顔も名前も全く知らない中で、授業中に、先生に当てられた。そのクラスでは、発言した生徒が、次の生徒を指名するという方法が採られていた。私は、自分の発言が終わると、挙手したクラスメイトの名札を必死で読んで、次の人を指名した。「松井さん」。松井さんは、休み時間になって、私に話しかけてくれた。「なんで私の名前わかったの?」と、嬉しそうに。その後、どんなやりとりをしたのかは覚えていないけれど、松井さんは、私にとても親切にしてくれた。家に帰ってから遊ぶ約束もしたし、松井さんのお家で漬けているらっきょうの味見をさせてもらったり、駄菓子屋さんの場所を教えてもらって一緒にうまい棒を買い、うまい棒のちょっと面白い開けかたを教えてもらった。私は松井さんの親切のおかげで、新しい学校での生活やお友達と遊ぶことの楽しさを知ることができた。「松井さん」と呼ぶことができて、本当に良かった。